杢巧舎の伝統工法による家づくり

杢巧舎では、木・土・石で作る本質的な伝統工法の建築を基本としています。

伝統工法とは、自然に対抗するのでなく自然と共生する価値観、多様で不揃いな自然素材を巧みに使い、人にとっても環境にとっても良い、西洋建築の影響を受けるはるか昔から日本で継承されてきた工法です。

家をただ便利なモノとして捉えるのではなく、生態系の一部として捉え、素材の良さを生かした建築。

杢巧舎ではこの考え方を中心に家づくりをしています。

戦後の高度経済成長の中で進められた合理化により、手っ取り早く、かつ費用を抑えられるといった、

業者にとって合理的な家が求められ、一般化しました。

しかし、本来の家というのは経済や建築業者のために建てるものではありません。

土地の文化や風土を受け止め、そこで暮らす人々や環境にとって最も合理的な建て方をするのが家づくりです。

例えば、以下があげられます。

                     

      地面からの力を逃がし、地震に強い             :石場建て    
化学物質を使わず、防火・断熱・遮音・吸放湿・耐久性のある壁:土壁
汚れてもいい屋内空間をつくる               :土間
日差しをやわらかく遮る                  :障子
半屋外空間,日光浴,コミュニケーションの場        :縁側


これらは一例ですが、誰かが意図的に作ったものではなく、地域や文化、

人や環境の本質的なニーズによって自然に生まれたはずです。

私は「自然素材の家」「環境負荷が低い」「SDGs」という言葉を安易に使いたくありません。

石膏ボードをバンバン貼り漆喰や珪藻土を塗り『自然素材です!』と売り文句のように使われているのが原因でしょう。

本来必要とされた機能が長い年月の中でカタチとなり、それが文化として継がれていた。

ただそれを実践する、当たり前のことだと思います。

山に入り立木を選び、丸太から製材する

杢巧舎では自社で製材をしています。

山に定期的に足を運び、生えている状況や成長度合いなどを見ます。

気温や日照時間、森の環境によって木の密度(強度)が変わるため、
材料毎にどの木を使うか見極めが大切です。

印をつけ、切り出した木は丸太の形で挽舎に届きます。

人に個性があるように、木にも一つ一つ特性があります。

梁は木の曲がりをアーチとして利用するなど、できるだけ木の繊維に逆らわないよう木取りし、

大工が自ら木を挽くことで、木の特性を活かして、無駄なく材料に加工することが可能です。

加工した木材は、含水率を見ながら挽舎の低温乾燥庫で乾かします。

木材は、自然界(地表)に存在しない高温(80~120℃以上)や圧力(減圧・加圧)の処理により、

全部位に対して細胞破壊を起こし、本来の木材がもつ強度を失います。

輸入材や、国産材でも流通している木材の多くは、生産合理性を高めるために乾燥処理時間の短縮を優先し、

高温、減圧(真空)、高周波などの物理的破壊工法を使用して出来上がったもので、

脆弱(材料の内がスカスカになっている状態)になってるケースが多いのです

杢巧舎では自然環境に最も近い状態で乾燥させるために挽舎に乾燥庫を設え、

35~40度で時間をかけて乾燥させていきます。

社寺建築などの木質建造物が腐食あるいは細胞破壊せずに残存するのは、

木が持っている強度を破壊せずに活かしているためです。

乾燥させるのにエネルギーをほとんど使わないため、環境にも優しい乾燥方法と言えます。

杢巧舎が考える石場建て

このところ、いただくご相談の大半が石場建てに関する内容です。

もっとも伝統工法らしい構造要素でありながら、現在の建築基準法では建てづらい状況にあるため、

神奈川に限らず全国的に施工されていない構法ですが、杢巧舎では積極的に取り組んでいます。

石場建てとは、家の足元にあたる基礎部分の工法で、自然と共生する建築のあり方を体現している工法です。

最近の建物にはコンクリートの基礎があり、土台と緊結されています。しかし、古民家やお寺などは、

石の上に柱が載っているだけで、建物と礎石とは縁が切れています。これが「石場建て」です。

杢巧舎の石場建てではコンクリートは不使用です。

割栗地業、よいとまけをするちゃんとした石場建てです。

建物の足元部分に空間があり、通気性を保ち家を長持ちさせます。また、基礎や土台を破壊せず手を入れることができるため、真のメンテナンスフリーとも言えます。

石場建てが地震に強い理由

家をつくる際、地震について耐震、制震、免震と3つの考え方があります。

近年、多くの一般住宅は地面と家を固定した上で、建物を固く作る耐震構造で造られています。

一般にプレカットの浅い仕口の材木同士に接合金物を木ネジで打ち込む方法です。そのため、木の繊維が裂かれることになり、

地震の際は、地面(基礎)に緊結されているので震動の直撃をモロに受けてしまいます。

一定の震動までは耐えますが、限界を超えると木材が折れてしまい、一気に倒壊する欠点があります。

地震波に模したで石場建ての家を揺らした実験を見てみましょう。

竹のように、しなやかに力を受けているのが分かります。

石場建ては、地面と緊結せず躯体にも金物を使わず、柔軟な構造を作ります。

地震の力を逃がし、家を守る。

1000年以上の歴史の中で名もなき大工によって継がれ、必然的に証明された、

地震が多い日本ならではの、古来からの知見と技が生きる真の倒壊しない建物なのです。

力を合わせ「よいとまけ」でつくる石場建て

家を建てる際、根切りした地面は柔らかいため、土を締め固める必要があります。

これを地業といい、杢巧舎では割栗石を用いた「割栗地業」を行っています。

(割栗地業については別記をご参照ください)

ご家族やご友人、地域の力を合わせ、唄に合わせてよいとまけを行います。

 

やぐらを組み、おもりで地面をつく。

重いおもりを滑車で上げおろし、地を固めていきます。

唄によって参加者が一体となり、人のエネルギーを感じる瞬間です。

尚、人を集められない場合でも石場建てはできるのでご安心ください。

竹小舞と土壁

杢巧舎のお客様には「土壁で仕上げたい」というご要望を頂く方が多いです。

気温や湿度を見ながら藁を混ぜ、発酵させた土を使います。

土壁の下地は竹小舞と呼ばれ、割いた竹を編んでいます。

夏は湿気を吸い涼しく、冬は湿度を保ち暖かい。

また、化学物質を使わないのでアレルギー疾患をお持ちの方にも優しいと評判です。

仕上げにより様々に見せる表情と、経年で変わる風合いを楽しむのもよいかと思います。

家は施主と大工が共に作る

「お客様は神様」なんて言葉がありますが、本当でしょうか。

杢巧舎では、施主と大工が直接打合せをして、一緒に家つくりを考えます。

 

私たちは家つくり、特に石場建てなど伝統工法の、プロです。

お施主さんが間違った事を言ったら、忖度せずに私の意見を伝えます。

時には、お施主さんと意見がぶつかることもあります。

決して意見を否定したいわけではなく、本気で目的に沿った家や住環境を考え、

十分にすり合わせ、お互い納得する家つくりをしたいのです。

逆に、お施主さんならではの考えやこだわり、生活スタイルに関しては私は素人です。

教えて頂きながら、一緒に理想の家について対話できれば幸いです。

直接すりあわせをすることで余計な費用も削減でき、

細部までこだわって家づくりができます。

杢巧舎と一緒に、神奈川で伝統工法の家づくり

木に個性があるように、人にも個性があります。

大工に、木に、お施主さんに、家に、それぞれあって然るべきです。

この個性を殺すのではなく、むしろ強みとして活かしていく。

良いものを作るには、これにつきます。

家つくりも、人の人生も。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

杢巧舎の家づくりを少しでも気に入って頂けたのであれば、幸いです。

どこかでお会いできる日を楽しみにしています。

 

杢巧舎 代表大工